FXと米金利
ところで、今回信用不安悪化再燃をもたらすきっかけになったのは、世界的な金利の上昇だ。とくに米長期金利は、8日にかけて一時5.25%に迫るなどの急騰を演じた。  そもそも米長期金利は、過去半年ほどドル円との強い相関関係が続いてきた。ところが今回その相関関係は大きく崩れている。米金利の一段高に対し、ドルは対円でむしろ頭打ち、反落となったわけだ。ただこの理由は、上記のように、今回金利上昇によって信用不安の悪化となっている点にあるだろう。 FX取引、FX初心者、くりっく365、FX口座開設、FX資料請求  ちょうど、前回のレポートで、ドル円と米長期金利の相関関係が試される局面を迎える可能性があるとの見方を示したが、まさにそんな構図になってきた。一定水準以上の米金利の上昇は、ドル高・円安要因より、むしろ信用不安悪化を通じた為替への影響が注目されることになりそうだ。1日発表の米5月雇用統計など、最近米景気指標改善が続いていることから、米長期金利が一段と上昇し、昨年7月以来の5%絡みの展開となってきた。これまで何度も書いてきたように、昨年10月頃からドル円はこの米長期金利と高い相関関係が続いてきた。その意味では、この米長期金利上昇で、ドルもいよいよ年初来の対円最高値更新必至ということになるが、果たしてどうか。金利差相場が試される局面ともいえそうだ。ドル円と米長期金利の相関関係は、上記のように昨年10月頃から続いてきた。ところで、米長期金利が昨年7月以来の水準まで上昇しているということは、ドル円との相関関係が展開する以前の水準まで上昇したということになる。  実際、米長期金利は昨年6−7月には5.2%を超えて上昇した時期もあった。その当時からドル円との相関関係が展開していたなら、ドル円は今年1月末に記録した122.20円というドル高値よりもドル高・円安になっていたはずである。  ところが、実際にはまったく逆で、昨年6−7月のドル円はむしろ一時115円以下のドル安・円高水準での推移となっていた。 FX  私が何を言いたいかといえば、ドル円と米長期金利の相関性は、ずっと続いてきたものではなく、むしろ昨年10月からの半年程度が、じつは異例なほどのドル円と米金利の相関性となっていたということだろう。言い換えれば、それだけドル円が強い「金利差信仰」で展開してきたということだ。  さて、いよいよ米金利が昨年夏以前の水準まで上昇しはじめたところで、ドル円もそれについて、ドルの対円高値更新ということになるか。「金利差信仰」の持続力があらためて試される局面を迎えているということではないか。ところで、今回米長期金利が一段と上昇するきっかけになったのは1日発表の米雇用統計で、注目の非農業部門雇用者数(NFP)が15万人と、前月の8万人から大きく増加したことが一因だ。  ただし、このNFPも6ヶ月移動平均で見ると、前月からさらに減少、ついに15万人を割れてきた。このカラクリは、6ヶ月平均で今回の15万人に入れ替わった昨年11月のNFPが19万人にも上っていたからだ。  このような6ヶ月平均では、当面NFPの減少に歯止めがかかるのは難しいだろう。なぜなら、今後6ヶ月平均で入れ替わる予定の昨年12月のNFPは22万人、今年1月も16万人と高水準であり、来月以降発表されるNFPがそれらを上回らない以上、6ヶ月平均は減少することになるためだ。  このように考えると、米金利の上昇自体がさらにどれだけ進むか微妙なところではあるが、まずはそれとつかず離れずといったドル円の関係が試される局面に立っているということになりそうだ。6月が始まった。6月相場の特徴としては、5月と同じ方向に動きやすいということがあり、その意味ではドル高・円安基調が継続される可能性が高いということになるわけだが、ちょっと懐疑的な点もある。 5−6月は、過去10年間で7回同じ方向に動いていた。5月がドル高なら、6月もドル高、または5−6月と2ヶ月ドル安が続くといったケースが多かったということだ。これは、9−10月(10年で7回)、10−11月(同9回)などとともに、2ヶ月連続で同じ方向に動きやすい局面ということができる。  その意味では、5月のドル高が6月も継続する可能性が高いということになる。ただし、今年の場合は4月もドル高であり、6月もドル高になるためには3ヶ月連続でドル高ということになる。さすがに、4−6月と3ヶ月連続で同じ方向に動いたのは、過去10年でも2回しかなく、その意味では決して簡単ではなさそうだ。  ちなみにこの2回とは、2002年と2003年。このうち2003年は、円高阻止の巨額為替介入局面であり、いわば「管理相場」という特殊な状況だった。一方2002年は135円まで進んだドル高・円安が転換、新たなドル安基調が始まったばかりだった。FX  現在は、緩やかながら2005年から2年以上続いてきたドル高・円安局面の中にある。その中でさらに3ヶ月連続でドル高・円安になるかは微妙ではないか。 ちなみに、6月はボーナス期で外貨運用が拡大し円安になりやすいとの考え方はあるかもしれない。ただ過去10年間ではドル高5回、ドル安5回で、必ずしも円安になりやすいといった特徴は確認できない。それよりむしろ7月は、過去10年で9回がドル高・円安といった具合に、圧倒的に円安になりやすい特徴がある。  また、6月の平均値幅は5.26円(2000年以降)で、3番目の大幅だ。ヘッジファンドで6月から下期に入り積極売買に動くところが多いことの影響なども考えられるが、膠着相場からの脱却が期待されるところではある。  ドル円は、4−5月と2ヶ月連続で2円台の値幅にとどまった。1ヶ月の値幅が2円台にとどまったのは、2000年から2006年までの84ヶ月で4回しかなかった。それが2ヶ月続いたのは、2000年以降では初めて。つまり記録的な超小動きになっているわけだ。FX  ところで、ドル円は3月も3円台の値幅にとどまっており、このままなら4円未満の値幅が3ヶ月連続となる。2000年以降で、4円未満の値幅が今回同様3ヶ月以上続いたのは3回(うち2回は4ヶ月連続)あったが、それらは小動き終了の翌月の値幅が一気に5円近くに急拡大していた。この経験則からすると、6−7月に値幅は急拡大する可能性になるが、果たしてどうか。 5月も、為替はどうやら超小動きのままで終わりそうな様相となっている。しかも4月までのドル円、ユーロドルの小動きがついにクロス円にまで波及してきた。為替全体の異常な小動き、「フラット化」。これはまだ続くのか、それとも嵐の前触れなのか。この数ヶ月のドル円、ユーロドルの小動きは、誰もが実感してきたことだろう。今年に入ってから4月までのそれぞれの月間平均値幅は、ドル円が375ポイント、ユーロドルが371ポイント。一ヶ月で400−500ポイントの値幅になるのがこれまでの普通だったことを考えると、4月はいかにも小動きが続いてきた。  ただ、その中で例年以上に動いてきたのがユーロ円などクロス円だった。ユーロ円の4月までの平均値幅は570ポイントで、ドル円などを大きく上回っていた。しかし、そのユーロ円も5月に入るとついに失速となってきた。  ユーロ円の5月の値幅平均は、30日現在で320ポイント。ドル円の282ポイント、ユーロドルの263ポイントは上回っているものの、今年の月間値幅最低(2月436ポイント)を下回るのは必至の状況となっている。  これはユーロ円に限ったことではなく、ポンド円、オージー円、キウイ円も軒並み5月は横ばい、小動きとなっている。ドル円、ユーロドルから、クロス円全体にも超小動き、「為替のフラット化」が広がり始めているわけだ。  過去にほとんどないほどの異常な小動きは、為替の構造変化であり、まだこの先も続くのか。それとも、嵐の前触れといった「不吉の予兆」なのか。 円安が続く中で、円以外の主要通貨も上がらなくなってきた。各通貨の総合力を示す実効相場を見ると、5月は主要8通貨(円、米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドル、スイスフラン、カナダドル)のうち、米ドルとカナダドル以外の6通貨が下落しそうな形勢になっている。さながら「勝者なき5月」といった様相だ。  29日現在で、5月の実効相場下落率トップは、主要8通貨の中で円のマイナス1.4%。続いてNZドルのマイナス0.8%、さらに豪ドル、ユーロも0.3−0.4%のマイナス。かろうじて米ドルがプラス0.3%。こういった中でカナダドルが、4月にプラス4.2%、5月3.3%と「一人勝ち」の様相になっている。  そのカナダドルは、3月まではピークから10%近く下がるといった具合で、むしろ主要通貨の中で「最弱通貨」の一つだった。その意味ではこの1−2ヶ月は割安感から買われているということではないか。  そのカナダを除けば、主要通貨がことごとく下落となっているわけだ。主要通貨全面安は、為替全体の膠着感を示すものでもある。一方でこれが何かの前触れという可能性もありうるわけだが、果たして? 米金利が上昇している。ところで、この数ヶ月ドル円と米長期金利の相関性はきわめて高いため、この米金利上昇はドル高・円安を示唆するものだ。ただこの米金利上昇、米景気を反映したものかといえばちょっと怪しい。むしろこの間の米金利上昇は、「中国の米債購入中止」といった景気以外の要因に反応している感じがある。景気にかい離した金利上昇は景気の腰を折り、先々のドル反落を招く可能性もあるものだ。  米長期金利が上昇、2月以来の4.9%が近づいている。ところで、この米長期金利は、この半年ほどドル円との相関性がきわめて高い。その米長期金利からすると、現在121円程度のドル高・円安水準で推移している動きはとくに違和感のないものだ。  ただし、この米長期金利上昇が、米景気を反映した結果かといえばちょっと怪しい。今年1月から2月にかけて米長期金利が4.9%前後まで上昇した時は、米景気の一つの目安である雇用増加数(NFP)の3ヶ月移動平均は20万人近くの高水準となっていた。ところが5月初めに発表された雇用増加数は同10万人強へ急減している。  このように雇用増加数で見る限り、同じ米長期金利の4.8−4.9%水準で、1−2月と現在では大きく異なる。では、最近の米金利が景気からかい離した形での上昇になっているとしたら、その原因は何か。注目されているのが「中国の米債購入中止」だ。 FX  米長期金利が4.8%を超えて上昇加速となったのは5月18日から。この日、中国は人民元の変動幅拡大などを発表した。変動幅の拡大により、人民元の上昇余地が拡大すると、人民元高阻止のための米ドル買い介入は減る。それは同時に介入で得たドル資金を米国債購入に回す動きが減るとの思惑にもなった。  また、これと合わせて中国は巨額の外貨準備から米国の会社に対して出資することも発表した。これもまた、外貨準備の運用を、これまでの債券を中心とした安全資産からリスク資産にもシフトする動きととらえられた。  このように、中国の米国債購入中止、減少見通しと米債券下落=長期金利上昇のタイミングは重なっていた。つまり、最近の米長期金利が景気で説明できる以上に上昇しているのは、中国要因に対する反応で、その意味で景気からかい離した米金利上昇になっている可能性がありそうだ。